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講師のブログ・Q&A

  • 男性の講師です
    東京都世田谷区
    40歳
    米ハーバード大学大学院/東京大学大学院 Harvard Graduate School of Education/ 東大人文社会系研究科

ハンドルネーム:HGSE2020さんのブログ

Memoria Technica『記憶術』と受験勉強!

新年おめでとうございます。皆様と社会、世界にとって、良い年になりますように。

さて、今日のブログのテーマは ー記憶術ー です。

ー最低200個から250個の単語を毎日記憶(長期記憶)するのは本当に普通の生徒に可能か?ー

記憶術を英語で表現するにはいろいろな言い方があるのですが、私がアメリカにいる時から好んで使っているのがメモリア・テクニカです。これはラテン語ですね。

私は記憶術を、米国で修得し、また日本でもことあるごとに教える機会を持っています。ハーバードの大学院で1つのテーマとして考察した位です。大学で教え、予備校で教え、国際機関での業務などもあり、どうしても記憶は大切です。ただ、記憶術と言う名前が好きではありません。術と言うといかにも怪しくて、わらにもすがる感じに聞こえてしまうからです。

ところがこれが非常に有効です。冬の講習を予備校で12月30日まで行ったのですが、英語の講習でしたが記憶術のコーナーを毎回勝手に設けました。そうすると皆さん目の色が変わって、非常に真剣に取り組みます。そしてこの記憶術と言うのはきちんとやれば非常に面白いものです。ですので、若干だけ紹介したいと思います。

★記憶術はギリシャから生まれた
有名な話ですが記憶術の先祖はギリシャです。そこからほとんど本質は変わっていません。シモニダスがその開祖だとされていますが、むしろそのようなカルチャーが重んじられていたと言うことです。ギリシャ時代はラテン時代へと移りますが、記憶は、高潔な生き方に次いで大切なものだとされるほどのものでした。ペーパーが貴重なものだったので当然ですよね。

★記憶=暗記ではない
暗記と言うのは、受験勉強に見られるように、「くだらないと思われることを短期的に覚えて、終わったら忘れること」です。短期記憶なので見事に忘れてしまいます。

★記憶のエッセンスは何か?
記憶のエッセンスは一言で言えば「イメージ」です。記憶は暗記ではなく、最も大切なものといえます。おばあちゃんとの記憶、お母さんの記憶、大切な思い出、修学旅行の思い出、すべてイメージ記憶です。イメージはアイデンティティであり、その意味で記憶とは人間そのものなのです。

★どのくらいで忘れるのか?
ジョージミラー(1956年)の有名な理論があり、人間が全く無意味なものを記憶する能力は7 ± 2、そして忘却は、1時間で半分忘れ、寝て起きたら10%忘れ、1ヵ月したら14%忘れ、1ヵ月で74%忘れます。

★記憶術は効果があるのか?
もちろんあります。平均的な生徒を指導して可能なのは、英単語を200個から250個1日に覚える(ただし元はリードしてあげてついてあげることが大切です)、3分間で円周率を40桁を覚える、25の単語の順番を正確に2分で記憶する、といった作業が平均的です。もちろん、選手権などが好きな人たちはトランプ記憶とか人と顔の一致の記憶など、競技として起訴いますが、実際にはそれらはあまり役に立ちません(ただし記憶のトレーニングとしてはものすごく有効です)。

★日本の記憶チャンピオンはどのような人たちか?
これは実は難しいところで、日本の記憶チャンピオンはどちらかと言うと、「40歳を過ぎてから記憶にチャレンジした」とか、「もともとは大学時代までは全く勉強ができなかったけどその後練習行った」といった経歴の人が多いです。ですので受験勉強とのつながりが非常に甘いのは間違いありません。実際に記憶術でトランプや数列を見事に5000桁暗記してる人はたくさんいますが、5カ国語マスターしたような人は日本にはその分野ではいません。
ところがアメリカやヨーロッパですとエリートほど記憶術を行いますので、こちらの方が、日本の受験生やその保護者さんには役に立つことでしょう。

★やり方は決まっているのか?
決まっています。実際にギリシャ時代から本質は変わっておらず、いろいろな名前が付けられてきただけのことです。そもそも昔は脳科学がありませんでしたから、最近は脳科学が後付け的に説明しているところは多いのですが、やり方そのものは変わっていません。

★有効なやり方は?
やはりそれは、「場所法」です。ロキ法、ジャーニー法、ペグ法など、いろいろな呼び方があります。ロキとは英語で言うロケーションですから場所です。場所を表すトポスと言う古いヨーロッパの言葉は英語でプレイス、またトピックの語源でもあります。簡単に言うと、自分の中で見知った場所は脳の中に強く焼き付いているので、場所ニューロンが働き、非常に強い記憶を可能にします。その場所にあらかじめ番号を振っておき、そこに記憶を結びつけていきます。

1つの場所をルートといい、そのルートの中にいくつものプレイス(地点)を置くわけです。ルートを増やしても良いですしプレイスを増やしても構いません。ただ、自分の記憶の中にすでにはっきりと存在している場所であることが一が条件です。1つのルートの中に52のプレイスを作るやり方がヨーロッパではよく取られますが、これはトランプが52枚だからです。生徒さんに指導する場合はまずは12個か20個にしています。そしてこのルートをいくつか一緒に作っていきます。英単語や複雑な人の名前のような暗記に近いものは、外の場所の方が良いですし、物事の順番や流れなのであれば、おうちの中でも全く大丈夫です。

そしてこの場所の中に最低2つ程度、またはプロだと3つか4つを結びつけ、イメージとしてきれいに記憶していきます。イメージ記憶なので長期的に保管されます。いちど使った場所を複数回使うこともできますが、同じ場所ばかり使い続けるのは少し微妙です。

★1人でできるのか?
1人では最初は難しいです。というのもルートやプレイスの作り方が、個人の記憶と結びついていなければいけないので、誰かがそのやり方を教えてくれないと、自分の作ったものが正しいのか正しくないのかもよくわかりません。だから最初は指導してもらうに限ります。

★DVDや教材を買うのはありか?
微妙です。数千円なのかなと思ったらDVDは100,000円以上しましたり、高すぎです。おまけにその人がルートやプレイスを作ったりすることを手伝ってくれないので、1人でやるのは聖子さんには無理です。また日本の教材は、記憶チャンピオンであっても受験をあまり意識していませんので、応用が効きにくいです。

★DVDや教材を買うのはありか?
微妙です。数千円なのかなと思ったらDVDは100,000円以上しましたり、高すぎです。おまけにその人がルートやプレイスを作ったりすることを手伝ってくれないので、1人でやるのは聖子さんには無理です。また日本の教材は、記憶チャンピオンであっても受験をあまり意識していませんので、応用が効きにくいです。

★ものすごく簡単な具体例を出して?
授業では、英語の文章の中から好きなページを生徒さんに指定してもらって、そのページを私が記憶して披露する(1ページの英語の長文だと2分ほどいただければ)みたいなやり方を使うことがあります。

最初の最初の練習としては、例えば、流れを理解するのであれば、(本当によくあるやり方なのですが)

ーー自転車、コンピューター、はしご、枕、カメラ、ブーメラン、ケーキ、日記、石鹸、キリン、iPhone、刀、午後ティー、時計、英語、最高裁判所、オバマ、ささみ、宝くじ、チューリップーー

の20個の順番を数十秒で覚えてもらいます。少し何かを挟むと、まず再現できません。再現できる生徒さんは記憶術的なものを行っている生徒さんです。そこでやり方を教えてルートとプレイスを作って、イメージ記憶をしてもらうと、全員数十秒で覚えられます。後は、円周率の数字記憶なのですが、これも30型40方であれば数十秒です。これらを応用していって、英単語や古文単語、理科や社会の知識、社会の流れ歴史の流れ、数式や公式などまでフォローします。逆に言えば、数式や公式、英単語までケアできないのであれば、ただの記憶ゲームですので、無駄になってしまいます。

★そもそもの目的は?
1つの目的は、記憶そのものです。記憶と言うものが実はものすごく面白い作業であることをわかってもらうことが目的です。

もう一つの目的は「自己効力感」セルフエフィカシーです。この自己効力感は人間にとって本当に大切なものです。やれば自分もできるのだなと言う感覚を持ってもらうことで、その後の作業が全く別の経験に変わります。

英語や数学、古文や理科社会といった、サブジェクト単位(科目や教科)から勉強を始めるよりも、そもそもの記憶とは何か、どのように記憶するのかといったことから始めた方が、実は勉強ははるかに楽しいものになります。

そのようなことも考えまして、最近はこうした記憶メソッドを、家庭教師やその他での教育に挿入するようにしております。少しでも興味があれば、ご遠慮なくお尋ねくださいね。