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講師のブログ・Q&A

  • 男性の講師です
    東京都世田谷区
    39歳
    米ハーバード大学大学院/東京大学大学院 Harvard Graduate School of Education/ 東大人文社会系研究科

ハンドルネーム:HGSE2020さんのブログ

家庭教師はカリスマ療法に近い!

● 家庭教師とカリスマセラピーの関係


まず、カリスマセラピー、カリスマ療法というのは、主に米国で注目されている概念です。日本にはまだあまり入ってきていないと思います。これは、誰かの持っている圧倒的な魅力や力、憧れやエネルギーで、悩んでいる人を強くつき動かす方法ですね。

皆さんも、中学生や高校生の頃、悩んでいるときに例えばロックのミュージシャンに強い刺激を受けたことがあると思います。昔、映画館から出てきた人は、皆さん高倉健さんと同じ歩き方をして出てきたそうです(笑)。これもカリスマですね。部活の先輩にそれを感じる人もとても多くいます。学校の先生にもいない事は無いのですが、最近はあまりいません。

史上最強のカリスマは、世界全体だとイエス・キリスト、東洋だとお釈迦様(釈尊、ブッダ )になりますね。ナポレオンや織田信長、ダイアナ妃や歴史上の人物も当てはまります。悪い意味だと独裁者になりますね。

さて、家庭教師と言うのは、実はこのカリスマ性やロールモデルと非常に大きく関係しています。子供が、この人みたいになりたい!、この人はすごい、と思ってくれることで、子供がつまらないと思っている日常空間から飛躍して、新しい世界に入っていくことができるわけです。

これは心理学的に言うと、投影、転移、逆転移、投影同一化といった現象が関わっています。簡単に言うと、家庭教師の持っている魅力が、また希望やエネルギーが、2人で居る場において、生徒に乗り移り、生徒がささいなことを忘れて、その家庭教師の姿を自分に重ねるプロセスですね。

前にも書いたのですが、実は、勉強法や説明のうまさは、全体の15%程度しかないとされています。もちろんそれでも積み重なれば大きな数字なのですが、説明がうまいから勉強ができるようになるなどと言う事は無いわけです。

(こう言ってしまうと反論する人もいると思うので、若干説明しておきますと、例えば、患者さんはなぜ治るのかで取り上げられる数字としてよく紹介される、①外的要因と本人要素が40%、②関係要素が30%、③プラセボ効果、期待効果が15%、そして④テクニックと介入技法が15%、と言うデータが分かりやすいと思います。本人の力と、温かい治療者の力を合わせるとすでにそれで70%、そこに、良い意味での思い込み(自分は良くなる!)が加わると85%で、どういうテクニックを使って何を行うかは、15%しかないと言う事ですね。

そうすると、家庭教師が、いかに本人の自信を引き出し、自分の魅力を示し、この人となら自分は間違いなく伸びる、この人みたいになりたい、と思わせることで85%は成功すると言うことです。

実はそのような時に、「いかに勉強は君の将来にとって大切か」「勉強しないと将来大変なことになるよ」みたいなこと言っても、何の意味もありません。勉強そのものに意味があるのではなく、その人と一緒に勉強、または他の何かをするということがカリスマセラピーの本質だからです。

イエス・キリストと一緒にいた弟子は、イエス・キリストと一緒にいること自体が光栄で楽しく、例えば自分が貧乏だとか、自分の顔がいいとか悪いとか、勉強ができるとかは、どうでもいい位小さなことに思えたわけです。もちろんだからといって、内容が正しくなくていいわけでは無いのですが、正しい内容でも、嫌な人から言われている場合には、正しい内容に思えないと言う事ですね。

このようなカリスマセラピーは非常に非常に強力です。
ところで、「カリスマなど自分にはない」と言う人がたくさんいます。それはその通りで、何百万人を一気に動かすようなカリスマは、限られた人にしかありません。誰もが演説で人々を熱狂させられるわけでは無いわけです。

ところが、1対1だと話が全く違います。1人の中学生高校生を惹きつけることは、ものすごく難しい事とは言えません。確かに難しいのですが、天賦の才能が必要とまでは言えません。東大卒、早稲田卒、慶応卒といった学歴もそれをヘルプしてくれるでしょう。そこに共通の趣味と、コミュニケーション力、そして何より大切な自由な発想と意見の提示があれば、それは可能だとされています。それも難しい場合は、教えると言う仕事には限界があると考えた方が良いかもしれません。

アンドル•ワイルと言う医学者をご存知でしょうか?ハーバード大を出たベストセラー医学者なのですが、彼は従来の、医者が患者を治すんだみたいなモデルがいかに効かないかを生涯をかけて証明し、自己治癒力をキーワードにして新しい医学を切り開きつつあります。自己治癒力と言うのは、人間の中にはそもそも、治りたい、治ろうと言う力が備わっていると言うことです。

それと同じで、思春期の青少年の中には、もともと、学びたい、成長したい、自由に生きていきたいと言う自己成長力(これは勝手に名付けました)が強く備わっています。ですから、その生徒にとってのカリスマになろうとすれば、その生徒が持っている力に乗っかればいいのであって、難しいことではありません。

参考になればと思います。
ところでこれには若干の難点があります。1つは、保護者が相対化されてしまうことにあります。これを嫌がる保護者がかなりいます。カリスマが家庭教師や外部の人に移ってしまうため、子供が保護者に抱いている尊敬のようなものがすごく低くなってしまいます。それを煙たがる保護者がいる事は事実です。

もう一つは、家庭教師がその生徒の潜在的な能力や、現状を見極めておかないと、その家庭教師が出した結果を自分が出せるに違いないと強く思い、例えばとても学力が低くて半年や1年でどうにもならない場合に、後々ショックが大きくなることがあります。そこには気をつけなければいけません。

もう一つは、その力の使い方です。ヒトラーは、7人のナチ党の党員を20,000,000人まで演説の力で育てました。ただその結果は、ご存知の通りです。若い人カリスマの力で動かすのは決して悪いことでは無いのですが、その生徒に、後々まで良い影響を与えないといけませんね。

そこで必要なのは、家庭教師と保護者の連携です。保護者さんと家庭教師が、裏で、しっかり連携しておくことですね。ただ、最近の保護者さんには、やはり独占傾向が見られるケースがかなり多くあります。お子さんは自分のものだから、といった感覚ですね。そうしたケースにおいては、あまり家庭教師がカリスマとしての力を発揮してしまうと、

保護者さんが、心理学的には嫉妬に近い感情を持つことが多くあるということも覚えておいてください。そうなってしまうと1番被害を受けるのは生徒さんですから、家庭教師も保護者も、そこについては注意したいものですね。

お読みいただきありがとうございました。